2017年4月20日木曜日

恋愛事情

恋の季節です。

まぁ、これは主に北半球の人口にとっての現象であって、南半球はお別れの季節なのかもしれません。

爽やかな風が湿り気を帯び、前髪が上手にまとまらないこの季節。
誰かのためにきれいにしたくて、前髪を異常に気にしていたあの頃。
未熟で不器用だった私。

いつの間にか諸々達者になり、恋愛に悩むことがなくなりました。

悩みそうになればそれを上手に手放し、のめり込みそうになれば気持ちに折り合いをつけ、そんなことを繰り返していくうちに、私は恋愛マスターとして君臨し、日夜恋に悩む男女の吐息を聞いているわけで。

恋の歌を唄う者がこんなんでいいんでしょうか。

今日みたいな気持ちのいい風が吹いていると、私がまだ恋愛トレーニング中だった頃のことを思い出します。

片思いの思い出です。

私はその人に夢中でした。あの頃の私は、今よりもっと正直でまっすぐで、向こう見ずでおよそ優雅からはかけ離れた女の子でした。ちなみに、その頃の私の体重は38kg。Cカップ女子でした。

その頃の私は「しない後悔よりもする後悔」を全面的に押し出していました。今でもそのままなんですが、あまり長いことこの精神で生きているので、もはや後悔すらしない境地に至っています。

私はその人に「あなたが好きです!」と真っ直ぐに気持ちをぶつけます。するとその人は

「いやいやいやいや、勘弁してください」

というのです。以下、その方と繰り返した会話の一部です。

「あなたが好きです!」
「いやいやいやいや、勘弁してください」
「そこを何とか」
「いやいや、幸せになってください」

私はなんとか彼に振り向いてもらおうと、いろいろと画策しました。とにかく、一緒に過ごす時間を作り上げ、自分を知ってもらおうと一生懸命でした。今思えば、この時の経験から私の恋愛作戦技術が飛躍的に向上したように思います。

私はその人との飲み会を定期的に設定していました。二人だと断られてしまうので、必ず複数人で飲んでいました。そして、得意の話術で惹きつけ、うっかり終電を逃すという事態を上手に招くのです。

そして、上に書いたような会話が繰り返されるわけです。
フラれても撃沈しません。ほとぼりが冷めるのを見計らって、また飲み会にお誘いするのです。時には私は不参加のふりをして、現場に到着すると私がいるという奇襲攻撃に近いこともやっていたと思います。

私がその人に恋をしていることは、周囲では有名な話でした。

ある日のことです。その日の夜、私はその人との飲み会を控えていました。就業ベルが鳴るのを今か今かと待ち、気合い十分の空気感を放っていました。周囲の人たちはみんな私の恋を応援してくれていました。私は今日の気合いを職場の先輩たちに宣言しました。

「私、今日こそキメます!」

その声を聞いて、職場の先輩(男性)が素早く立ち上がります。

「おぬき、これを持ってけ!きっと役に立つ!」

先輩は一枚のコピー用紙を私に手渡しました。
私はそれを一読し、唇をかみしめ、力強く頷きました。

「ありがとうございます!頑張ります!!」

手渡されたコピー用紙は『都内ラブホマップ』のコピーだったのですが、マップには蛍光ペンで先輩一押しホテルに大きな丸が付いていました。先輩からの大きなエールを胸に、私はその紙を握りしめ、恋という戦に立ち向かいました。

いつものようにうまい具合に相手を会話で惹きつけ、まんまと終電を逃します。

「あああ、もう終電ない。また終電逃した」

というその人に私は言い放ちます。

「とにかくタクシーに乗りましょう!」

そして、あれよあれよという間に彼をタクシーに押し込み、私も隣に乗り込みます。飲み会に一緒に来ていたメンバーはタクシーの窓越しに旗を振って応援してくれています。

「どちらに行かれますか?」

そう聞くタクシーの運転手さんにすかさず都内ラブホマップを手渡し、

「運ちゃん、ここにお願いします!」

「お!?はい!わかりました!!」

私の勢いに、運ちゃんもすっかり私の味方です。
隣から、「ひ~…」という小さな悲鳴が聞こえてきます。しかし、もう遅いのです。恋という船は後戻りしないのです。

……結論から言うと、ここまでしてもまたフラれるわけですが、それからも私は全然気にせずほとぼりが冷めれば彼にアタックし続けていました。

やがて、彼がお見合いをして結婚が決まったという報告を受け、私の恋は見事玉砕するわけですが、その時の心境は完全にやり切った感があり、切ないというよりはむしろ清々しい気持ちでした。

この恋での私のテーマは『ここまでやってもダメなら仕方ない』でした。私は見事にそれを体感しました。やり切れば人は後悔などしない、という経験の元、私は今に至ります。だから私は未だにダイエットをしているのです。まだまだやり切っていません。

長くなりましたが、結局何が言いたかったかというと、数々の恋愛を経験し、今はガンジーみたいな境地にたどり着いたよ、ということです。

ということで、恋愛相談があればどうぞお気軽にワタクシまで。