田んぼが幾重にも重なる長閑な風景。そのひとつに何十羽ものアヒルが集まっているのを、私はローカルレストランから眺めていた。
空は夕暮れがかっていて、オレンジ色の空と紫色の雲のコントラストが美しい。
田んぼで働いていたおじさんが、やおらアヒルを煽り始めた。おじさんが手を大きく回しながらアヒルに近づくと、アヒルが一斉にひとかたまりとなって畦道に上がり始め、やがて一列になってヨチヨチと移動し始める。
その様子は、恐らく毎日のように行われている生活の一部の光景。長閑なこの土地での日常なのだ。
おじさんはアヒル達をかなり離れた田んぼに移動させたかったようで、じんわりとアヒルを追い詰めながら私から見てずいぶん左手の方に移動させていた。
ほとんどのアヒルが移動を済ませたというのに、一羽だけヨタヨタ畦道を歩いては田んぼに落ちてしまって、なかなか進まないアヒルがいた。やっと這い上がっておろおろと歩くも、足を滑らせ無様に田んぼに落ちる姿はあまりに滑稽で可愛らしく、笑いを誘った。
いるいる、ああいう鈍くさいアヒル。
見かねた田んぼのおじさんがそのアヒルを救い畦道に戻すが、しばらく歩くとまたもや田んぼに落ちてしまった。今度は畦道の向こう側に落ちたのでアヒルのドタバタする愛嬌のある姿が見えない。
おじさんはアヒルに手を伸ばし、アヒルを畦道に戻すかと思ったら、何やら手こずっているようでなかなかアヒルの姿が現れない。畦道が死角となっていて見えないが、田んぼの隅でおじさんが半腰になってアヒルと何かをしていた。ふふ、ほんとに鈍くさいアヒルなんだな…。
ようやくおじさんが立ち上がったがアヒルが這い上がってこない。ん?良く見るとぐったりしたアヒルがおじさんの右手にぶら下がってた。あ、あれ?もしかして、夕飯用に絞めちゃったの?
おじさんはぐったりとしたアヒルを右手に、のんびりと歩き出し、集まったアヒルの元に向かうと、再び大きく手を降りながらアヒルを移動し始めた。そのまま、おじさんはぐったりとしたアヒルを片手に明かりの灯る小屋に消えていった。小屋の煙突からは細い煙が昇っていた。
これも、この国の長閑な日常の光景。空はそろそろ夜が訪れていた。
「お待たせいたしました」
ウェイトレスの声に現実に引き戻される。注文した料理が運ばれてきたのだ。
「アヒルのカリカリ揚げでございます」
テーブルの上にこんがりとしたアヒルの姿揚げが置かれた。
繊細な子供だったら、きっと大泣きしていたことだろう。
おしまい。
あらら、アヒルかわいそうに。ミュージカルマジシャンの辻友子ちゃんは、アヒルのめめちゃん、オカメインコのるんるんちゃんと同居してます。昨年、ボクが入院したとき、友子ちゃんはめめちゃんが産んだ卵で煮玉子を作ってきてくれました。
返信削除めめちゃんは動画でよくみるけど、じっさいに会ったのは煮玉子をいただいたあと。ギタリストのケンちゃんとマジックショウを見に行ったときでした。
初めてめめちゃんを抱いて、でっかくて重いのにはびっくりドンキー!
あひるの卵!興味津々です。
返信削除私の見た光景は、衝撃の光景でした。
アヒルの卵は、鶏卵よりも少し大きい。
返信削除ウミガメの卵、食べたことがあるけれど、ピンポン玉によく似た形状です。
ダチョウの卵は食べそこねました。
のりこさん、「黄身返し」はご存知ですか。
『萬寶料理秘密箱』という料理本のなかの「卵百珍」に載っています。
http://homepage3.nifty.com/takakis2/hyakutin.htm